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自省録 マルクス・アウレーリウス著


「この本がないと困る」という本があります。「この本は無かったことにしましょう」と言われたら「ちょっと待ってくれよ」と言いたくなる本があります。

今回紹介するのは、私にとってはそんな種類の本です。

自分なんかとはまったく共通点がなさそうなマルクス・アウレーリウスというローマ皇帝が書いたメモ書きの集成で、岩波文庫版は神谷美恵子の名訳で知られています。

この本はつらい時に良く効きます。

私もローマ皇帝の考えることと、自分の出口の見えないグルグル思考がこんなにシンクロするとは思ってませんでした。

中身を読んでみると、ローマ皇帝が悩みまくっております。そんなこと悩んでもしょうがないだろ?……いちいち確認しないと前に進めないの?……自分をそんなに責めなくても……なんか、そういう感じの自問自答の応酬なのです。

結局、この本の要旨を言えば

「オレはダメだああああああああ!!」

という叫びに要約されるような気がします。きっと自分とシンクロしたのも、こういう思春期的な苦しみの部分なのでしょう。

昔、雑誌のエッセイで次のような内容を読んだことがあります。

「井戸の深みに落ちた自分のような者にとって、頭上に見える救済のロープは高すぎて手が届かない。自分のところまで垂らされるロープしかつかめない。そんなロープのような言葉しか自分には届かない」

ローマ皇帝が苦しみ、のたうち回る様子が記された本書は私にとってはそんなロープのような本なのです。

本の一部を抜粋します。

「君の全生涯を心に思い浮かべて気持をかき乱すな。どんな苦労が、どれほどの苦労が待っていることだろう、と心の中で推測するな。それよりも一つ一つ現在起ってくる事柄に際して自己に問うて見よ。『このことの何が耐え難く忍び難いのか』と。」

こんなことで悩んでいるオレはダメダメだあああああ!! 

という気分になります。こんな文章を空気のように吸いながら生きていくしかないような気がしています。


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