今、「精神科の薬についての本で最もおすすめの本は?」と問われたら、間違いなくこの本を勧めます。
辞書的に使う網羅的な本なら別の本があると思いますが、全体を見渡すならこの本が良いと思います。
この本をすすめるのには、今まで様々な向精神薬についての本を読んで体験した「落胆」が基礎にあります。
誤解のないように言い訳させて欲しいのですが、多くの薬物関連の本は、私には高尚過ぎ他のだと思います。正しい内容を証拠に基づいて間違いのないように伝えようとした専門家のみを対象とした本には、私が求める知識が書いていないことが多かったのです。
つまり、
「次にどんな薬を使ったら良いのか?」
「この薬について患者さんにどう説明したら一番分かってもらえるのか?」
「この薬は教科書的には効くことになっているけど、今の目の前の患者さんには合っていないようだ。なぜ? さあ、次の一手はどうする?」
……そういう、現実世界の困難に即した「次の一手」が見える薬剤の本。そういうものを求めていたのだと思います。
そして、たぶん多くの方が読みたいのも、
「この薬はどんな理由で自分に処方されたのか?」
「一緒に働く医者がいきなり薬を変えたけれど、いったい頭の中はどんなふうになってるんだろう? 実は何にも考えてなかったりして?」
……などという、もっともな疑問に答え得る、あるいは疑問の氷解とまではいかなくても端緒だけでも与えてくれる本を求めていると思うのです。
多くの場合、「正しくあること」と「役に立つこと」は両立しないように思います。多くのテキストが「正しく」あろうとして、踏み込むことができない選択に関して、経験に基づくことを断りながらも、この本は一応の答えを与えてくれます。
現実に様々な岐路に立たされて羅針盤となり得るのは、「役に立つこと」にこだわったこの種のテキストであるような気がします。
読んだ後、向精神薬に関する知識以外にも、精神疾患で苦しむ方たちの役に立とうとする強い意志を感じて元気をもらえる、そんな本でもあります。