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コタール症候群(Cotard’s Syndrome)について


昨日に続いて精神症状についての説明を続けさせてください。

今日は昨日の離人症よりさらに経験することが少ない症状ですが、非常に特徴があるので精神科医学の領域では有名な症候群、コタール症候群(Cotard’s Syndrome)についてです。

この症候群について精神医学教科書 Kaplan and Sadock's Synopsis of Psychiatry 11th Editionの内容を大まかに訳して抜粋してみると

「この症候群をともなった患者は財産・地位・健康を喪失した感覚だけでなく、心臓や血液・腸を失くしたと訴える。それを超えるとついには何もない無の世界について訴える。この比較的まれな症候群はたいていは統合失調症やうつの前兆として現れる。抗精神病薬が使われるようになって、この症候群は以前よりも見られなくなっている」

私が経験したのは類似の病態も含めて3人だけです。

それまでにも統合失調症の患者さんを含めて様々な訴えを聞いていましたが、最初に確信に満ちた様子で「内臓が消えた」と言われたときの、衝撃を今でもおぼえています。

了解(理解)不能であることが、本来の妄想の特徴ではありますが、その「飛び方」にも飛距離と方向があって、コタールの妄想はかなり方向も予想外に斜めで、距離も大きく感じられたのです。

その後、妄想の訂正(通常あまりすすめられません)を試みた覚えがあります。おそらく、そんなことはあり得ないと患者さんに思い直して欲しかったのだと思います。

明日はコタール症候群や離人症を伴った症例についてご紹介します。

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