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離人症とコタール症候群を呈した症例


今日は、一昨日と昨日に説明した離人症とコタール症候群をともなった症例に関する報告を紹介します。

離人症や他の症状をともなった高齢の躁うつ病患者における鑑別診断

Case Reports in Psychiatry Volume 2016, Article ID 1454781, 4 pages.

まずは、大まかに症例の提示を抜粋します。

「70歳の男性。警察が家族を逮捕しに来るという妄想のために落ち着かない状態にあった。家族は彼を当院の一般内科に連れて行き、検査を受けさせた。彼のバイタルサイン(血圧、脈拍などを含む最も基礎的な測定値)や神経系を含む身体所見は正常であった。さらに血液検査でもまったく異常は認められなかった。そして、医師は眠前に抗精神病薬であるクエチアピン25mgを処方した。翌日に彼は精神科に紹介された。」

その後、この男性は離人症に類似した現実感の欠如や時間・金銭の感覚の喪失を訴えるようになります。そして、さらに自分がすでに死んでいるとの妄想を抱きます。

具体的な訴えの一部を抜粋します。

“私は石になってしまった”

“私の心臓は止まってしまった”

“私は30万光年先まで行くことができる”

“私は全人類は破滅させた”

“借金が天文学的な額に膨れ上がっている”etc

妄想の内容もやや特異な点を感じ取っていただけるでしょうか?

以上のようなことから「コタール症候群」との診断をもとに治療が行われましたが、男性は今度は躁転(うつから躁へ気分の状態が変わること)しました。

後になって分かったことですが、男性には双極性障害の病歴があり、今回のエピソードもその一部であると考えられました。

稀な妄想や分かりにくい訴えであっても詳細に聞き取り、病態を把握することや、見通しをもった治療を行うために病歴の入手に努めることの重要性を示唆する内容でした。

それと、明日は開院日です。どうぞよろしくお願いいたします。

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