対人関係療法については一昨日説明させて頂いたのですが、もう一冊双極性障害への適応についての本を紹介させてください。
まず、冒頭における対人関係療法の意義にふれた部分を抜粋させてください。
「対人関係療法は、対人関係のストレスを解決する治療法であると同時に、対人関係の力を利用して病気を治す治療法でもあります。現代の日本には、まさに対人関係療法が有効だと思える領域がたくさんあります。そして、対人関係療法を通して、人と人とのつながりを育てていくことが、病気の治療を超えた意味を持つ時代になっていると思います」
この本では、まず双極性障害の大まかな説明がされた後、生体内リズムと病気の関係について、さらに対人関係療法と社会リズム療法を組み合わせた双極性障害への治療法である「対人関係・社会リズム療法」について話が進められています。
本文の中で述べられているように、双極性障害の患者さんが次のエピソード(調子の悪い時期)を再発させる背景には次の3つが指摘されています。
(1)決められた通りに薬を飲まなくなる
(2)ストレスの多い出来事(特に対人関係上の問題や社会的役割の変化)
(3)社会(生活)リズムの乱れ
本文の解説にある通り、「対人関係・社会リズム療法は、社会リズムを規則正しくするための社会リズム療法と、対人関係ストレスを減らしたり、社会的な役割の変化に適応しやすくするための対人関係療法を組み合わせたものです」。
双極性障害の治療を担当していると、上記の三つの要因で病状が悪化するパターンを多く経験します。その時に、社会リズムの調整を行い、生体内リズムを大きく崩さないようにしようという意識を少しでも持って頂くだけで、再発の回数や病状の程度が改善することを経験します。
この本は対人関係・社会リズム療法について具体的に書かれた本で、一般的な知識を得たい方にも、実践したい方にも非常に参考になると思われます。