すでにだいたいのものが揃っているがゆえに、欠けているものに対する欲望をエネルギーとすることのできない世代を「乾けない世代」と呼び、その「乾けない」人々がどのように生きていったら良いのか、あるいは別の世代がどのように「乾けない世代」と関わったら良いのか、そのようなことから論じられています。
すでに同じようなことは指摘されてきたかもしれませんが、このようなかたちで言語化されると説得力があり、頭を整理できるような気がします。
私はどちらかというと、マッキンゼーとか、グーグルが出てくる「ためになる本」が苦手ですが、これはモロに“そんな本”です。
でも、この本に関してはなんとなく嫌味がなくて、素直に読めました。それは多分、変化しないことこそが最大のリスクであるという変化至上の空気を漂わせながらも、結局信頼こそ最も大切であるとか、まずは人の嫌がる仕事から引き受けてみるとか、「古い」価値観とも親和性の高いメッセージを所々で発信しているせいかも知れません。
鈍感な私も、「何を求めて生きていくか?」という問いに対して、以前より各人で考えなくてはいけない時代になっているとは感じます。
そして、本書の中でポジティブ心理学者セリグマンの言説として挙げられている「5種類の幸せ」、つまり「達成」、「快楽」、「没頭」、「良好な人間関係」、「意味合い」のうち、何を自分の軸とするのか、きっと何らかの答えを準備する必要があるのでしょう。
何となく自分の生き方を振り返るきっかけにはなる本だと思います。特に私は、著者が主な生活拠点としており、ほとんどの住民がアルバイトで生計を立てていて、いつもどこかでお祭りをやっているというバリ島での暮らしが羨ましくなりました。