統合失調症の病態をどのように測定するかは難しい問題です。
非常に症状が幅広く、どこに焦点を絞るべきか判断に迷うところもありますし、陽性症状の中核的な症状である幻覚と妄想はそもそも主観的体験の内容や様式の歪みなので、他覚的・客観的に評価が困難と言えます。
そこで比較的測定しやすい機能的な部分で、病態の重症度を評価しようという研究が多く実施されてきました。
今回は握力と統合失調症の予後を左右すると言われる認知能力との関連について調べた研究をご紹介します。
握力は統合失調症と一般人口において認知能力と関連している
:476559人が登録されたイギリスバイオバンク研究
475397人の一般人口と1162人の統合失調症患者を含む大規模な資料を調査したところ、握力と認知機能との間に統計学的に有意な(差として意味のある)影響がみられました。認知能力のうちどの領域(視覚認知、反応速度、長期記憶、数的記憶、判断)で影響が強く出るかには差があったものの、この傾向は一般人口でも統合失調症でも認められました。
握力で脳の障害の程度を測ることが、若干飛躍した指標に思えるかもしれませんが、実際に大きな規模のサンプルで他の影響因子を調整して、独立した要因として抽出されたので、ある程度信用のおける結果であるような気がします。
このような精神疾患の重症度を数値化する糸口をつかもうとすることは、先日うつ病と脳体積の話でも述べたように、患者さんのつらさが理解されるために非常に重要だと思われました。