
以前からADHD(注意欠陥多動障害)のover diagnosis(過剰診断)が問題になっています。
診断基準が見直され、この診断名の使用頻度が多くなるなかで、本来はADHDというほど障害の程度が高度ではないのに診断してしまう傾向が出ています。
今回は遅生まれの子(アメリカでは9月から学校が始まるので8月生まれの子どもがこれにあたります)において、年齢的な差異を考えずに過剰診断がされているのではないかという疑問を背景とした調査をご紹介します。
注意欠陥多動障害(ADHD)と学校登録の時期
調査は2007年から2009年に生まれたアメリカ合衆国40万人以上の子どもを含みます。
まず、誕生月による学年の決定を①9月に境界を設けている州と、②境界を設けていない州に分けて考えました。
①の場合の診断率は1万人あたり8月生まれ85.1と9月生まれ63.6で21.5の差
②の場合は上記の差が8.9
境界を設けたほうが明らかに8月生まれの診断率が高まっていました。
つまり、より幼い8月生まれの子どもが、生まれた時期による影響を考慮されず、どの州でもADHDと診断される傾向があり、その差がよりはっきりとするのは誕生月による学年分けのルールを徹底している①の州であるということになります。
どうしても、同じ教室の中で過ごしている子どもたちのうち、比較的落ち着かない子どもを病的な多動と考える傾向があるのかもしれません。一旦慎重になり、生まれの時期(遅生まれの影響)を考える必要性を示しているように思われます。
多くの場合、ADHDの傾向は児童から思春期にかけて軽減していきます。評価時点の不注意や多動の状態を変化しつつある過渡的な状態としてみること、他の子どもと比較するとき(本来は絶対評価であるべきだとは思います)には月単位の発育期間の差も考慮することが必要であると考えました。