精神疾患を大きく「器質性」精神疾患と「機能性」精神疾患と分けることがあります。「器質性」の方は、脳の画像や身体的な異常などが客観的所見として確認できる疾患で、「機能性」の方はそのような目で見て分かるような所見はなく、脳の働きの上での異常が主である病気のことを意味します。
統合失調症は「機能性」精神疾患に分類され、少なくとも診断方法として、画像検査や血液検査等の客観的データは重視されない病気といえます。
しかし、最近は統合失調症の中でも脳の構造上の変化が明らかなものや、家族内で多発するタイプのものが指摘されており、目で見て分かる「器質的」な部分でもこの病気を捉えるよう努力が続けられています。
今回は統合失調症の血縁者内に脳の構造や知的機能に変化が見られないか研究した論文があったのでご紹介させてください。
218人の患者、330人の家族、432人の(比較対照のための)健常者が調査されました。脳の構造は確かに家族内で共通していました。具体的には頭蓋内容量、表面積、灰白質の体積、大脳・小脳・視床・橋など広範な部分で大きさが低下していました。
また、知能指数についても同様に健常者に比べて家族内では明らかな低下を認めました。そして、脳の体積減少と知能指数の低下は両方がほぼ同時に出現しており、統合失調症をひき起こしている同一の要素が原因であることが推測されました。
このように統合失調症の家族内に認める要素は、精神疾患のみではなく、多彩な変化を生じていることが分かりました。いつか、このような「機能性」と言われる疾患についても、今回のような「器質的」な部分とのつながりを明らかにする研究が積み重ねられ、根本的な治療が発見されることが望まれます。