子どもの暴力については様々な原因が指摘されていますが、実際どのような環境因子があり、出現の軌跡をとるのか明確でない部分があります。
今回はこれらの点に関してカナダのケベックで行われた大規模な調査についてご紹介します。
児童から思春期における少年少女の暴力に関する発達の軌跡と危険因子
1.5歳から13歳における2000人以上の子どもが調査の対象となりました。母親、教師、子ども自身への聴き取り調査が継時的に長期間実施されました。
まず、この時期における殴る・蹴る等の他者への攻撃を含む物理的攻撃が出現した割合は全期間で80.9%、特に1.5歳から3.5歳までが増加し、その後は減少に向かうことが示されました。
また、程度の高い暴力が出現しやすい危険因子として、父母の低い教育歴、低収入、親のうつ症状、親自身の思春期における反社会的行動等がありました。
全体として、子どもの暴力などの問題行動は、家族機能等の包括的な病理をみる視点で関わる必要性があると考えられました。(しかし同時に、これで家族に原因があると非難するような方向にならないようにしなければならないと思います)
また、印象的だったのは、この調査では暴力の有無や程度の調査を母親、教師、子ども自身に行っており、それぞれで大きく結果が違っていた点です。一つの現象をとらえるときに、様々な立場から総合的にとらえる必要性を感じました。