以前に抗うつ薬による治療開始後、高齢者における代表的骨折と言える「大腿骨骨折」が増加するという研究がありました。
今回ご紹介するのは、治療開始の前年までさかのぼって骨折の頻度を調べた研究です。
治療開始前後の高齢者における抗うつ薬の使用と大腿骨骨折の関連
40万人以上の高齢者が対象となり、治療開始前後の骨折の頻度が調査されました。
以前の研究で指摘されていたように、抗うつ薬による治療開始後の骨折の頻度は上昇していましたが、治療開始以前にも同年代の一般と比較し、骨折の頻度は高いことが分かりました。(治療開始前年:抗うつ薬使用者2.8% vs 一般1.1% 治療開始後:抗うつ薬使用者3.5% vs 一般1.3%)
このように骨折の頻度上昇が、治療開始以前にも確かめられ、必ずしも薬剤の使用による影響で骨折が生じているだけではないと思われました。
骨折が生じているしくみまでは明らかでありませんが、抗うつ薬が必要と判断されるような精神状態の悪化、活動性の低下が関与している可能性は考えられます。
抗うつ薬に限らず、特に高齢者に対する薬剤使用に関連して、投与開始以前にも状態をいつも慎重に評価するべきであると感じました。