妊娠中の抗けいれん薬(気分安定薬)の投与が胎児の形成に影響を与えることは以前から指摘されて来ました。
本日紹介するのは、特にてんかんや躁うつ等の病態で頻用されているバルプロ酸が子どものADHD発症を大きく増加させるという内容の論文です。
妊娠中のバルプロ酸や他の抗けいれん薬投与とADHD発症リスクの関連
デンマークでなされた大規模なコホート研究という手法の調査で、90万人以上の子どもが対象となりました。
結果として、妊娠中にバルプロ酸を投与された場合、その後子どもを10年以上追跡したところ、通常よりも48%、ADHDの発症リスクを上昇させることが分かりました。
胎児に対する影響ではその他の抗けいれん薬も警戒されていますが、今回の調査ではバルプロ酸以外の抗けいれん薬について発症の増加はありませんでした。
上記のように、バルプロ酸は現在使用頻度の高い向精神薬の一つであり、発症リスクの上昇も大きいことから、処方方針に与える影響が考えられる研究です。
今まで以上に、妊娠可能年齢の女性に対する使用は、詳しく情報提供した上で有用性を厳しく検討する必要があると思われました。