頭皮に多数の電極をつけて脳の電気的な活動を波のような形で測定する「脳波検査」と呼ばれる検査があります。
見た目は電極数の多い心電図検査のようなものをイメージしていただければと思います。
脳の活動を客観的に評価できる数少ない検査の一つです。しかも基本的には脳波計があれば検査できるので、必要な設備やコストが低いという特徴もあります。
昔からてんかんや意識障害の検査として使われて来ましたが、最近もっと質的な評価を他の疾患についても行えないかという話題があります。
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うつ病における治療反応性の脳波関連バイオマーカー(診断の指標)
脳波によってうつ病の治療反応性(薬による治療がどのくらい効果をあげるか)を予測しようとする76本の論文について調査したメタ分析(複数の研究結果を分析・統合してより信頼性の高いデータを得るための分析)で81の診断上の指標が含まれていました。
これら全体を統合したところ感受性(どれくらいもらさずに診断ができるかという網羅性のような指標)が72%で、特異性(どれぐらい正確に診断できるかという的中率のような指標)が68%でした。
しかも、信頼性の高い研究も少なく、出版バイアスと呼ばれるデータの偏りも大きいと考えられる結果でした。
つまり、現在提案されている脳波上の指標は日々の診療で使われるにはまだまだ信頼性が足りないということが示されました。
これによって、うつ病の治療効果を予測しようとする脳波検査の有用性が否定されたわけではありません。
今後さらに精度を増して、小さな施設でも客観的かつ質的な診断が可能な患者さんにとってメリットの大きな診断方法が登場することが望まれます。