アルツハイマー病に見られる脳細胞の変化として、アミロイドβやタウ蛋白と言われる物質が蓄積し、その後に細胞変性→脳萎縮という変化が認められます。
どんな軽微な症状が発現した段階でも、すでにアミロイドβの蓄積はピークの状態であり、タウ蛋白の蓄積は始まっていると言われます。
現在アルツハイマー型認知症に対して使用されている抗認知症薬について、特に早期の認知症に対する進行遅延が効能の中心であることを考えると、認知症の早期発見が非常に重要と言えます。
しかし、上記のように症状が現れた時点ではすでに細胞の中での変化がかなり進んだ状態にあることも事実で、症状以外の早期のバイオマーカー(診断の指標)が発見できないか研究がすすめられてきました。
今回は、睡眠の変化で早期にアルツハイマー型認知症を発見できるかもしれないという研究です。
眼球運動を伴わない睡眠の減少はアルツハイマー病におけるタウ蛋白蓄積に関連する
老齢変化に関する研究に登録されている119人の60歳以上の方が研究の対象となり、脳波、認知機能検査、脳画像、脳脊髄液検査が実施されました。
結果としては、眼球運動を伴わない睡眠を表す脳波の徐波(ゆっくりとした波形)が低下しているほど、アルツハイマー型認知症の進行を表すタウ蛋白の蓄積が進行していることが分かりました。
つまり、睡眠の質が悪いほど認知症の細胞変化が進んでいることを意味します。
この変化は、記憶力の低下等の症状が出現するよりもずっと早期に現れており、今後アルツハイマー型認知症を早期に発見するための指標となる可能性が指摘されていました。
睡眠の質と認知症の関連については
①睡眠の質の低下が認知症をひき起す
②認知症による細胞変化が睡眠の質を悪くする
の2つの方向が考えられてきましたが、今回は②の方向について1つの証拠が得られたことになります。
上記でもふれましたが、アルツハイマー型認知症は早期発見が非常に大切な疾患です。脳波は比較的簡便な検査で、費用も少なくて済むため、今回の研究は幅広く測定可能な診断指標が登場する可能性を感じさせる内容でした。