死にたい気持ちについて尋ねるのは勇気が要ります。
相手がそれほどつらくなさそうな時は、場にそぐわない質問で相手を当惑させてしまいそうだし、つらそうな時は下手な尋ね方をして相手の弱っている心を傷つけないか心配になってしまいます。
相手が自分の子どもであっても、うっかり心の深いところを突いて、悪い刺激にならないか、かえってそっとしておいた方が良いのか等、逡巡されることが多いのではないかと思います。
今回は、子どもの自殺や死について親子間の認識の違いを調査した研究の紹介です。
思春期の子と親の自殺願望(希死念慮)をめぐる認識の一致
フィラデルフィアの神経発達を調査するコホート(調査対象の集団)に登録されている11歳から17歳の5137人の子どもが対象になりました。
結果として、49.9%の親は子どもが自殺について考えている場合でも気づいておらず、75.6%の親は子どもが頻繁に死について考えていることについて認識がないことが分かりました。
さらに、48.4%の親では自殺について尋ねても否定されたと答えており、67.5%では死について考えていることもないと言っていたということでした。
親は子どもが自殺しそうになっていても気づけないし、尋ねても答えない……。
では、どうしたら良いのかと困ってしまいます。
この論文は小児科領域の雑誌への掲載ということもあって、小児科医などの専門職がより、自殺について敏感に察知するようにトレーニングするべきである等の提案が述べられているのですが、そういう部分で解決される部分は少しであるような気もします。
根本的には親が子どもに対して抱いている関心の質や量、それを反映しての信頼関係の形成が土台にあると思われました。
それだけでは全く十分ではないのでしょうが、……「言っても仕方ない」と思われないように子どもの話は否定せずに受容し、少なくとも「分かっている気」にならずに、子どもの気持ちを感じ取る機会を作るよう関わり続けることが必要だと考えました。