アルツハイマー病に関しては様々な病因が類推されていますが、その中の一つに感染症としての説明があります。
胃の粘膜病変の主要な原因の一つがピロリ菌であったように、アルツハイマーで同様の機序が見つかれば、治療や予防が大きく前進することが期待できます。
今日は歯肉炎の原因菌とそれによって産生される酵素がアルツハイマー病に関連しているのではないかという研究です。
ポルフィロモナス菌とアルツハイマー病の脳組織: 病因と阻害因子による治療に関する根拠
現在までに以下のような結果が得られています。
①生きたアルツハイマー病患者の脳脊髄液と死後のアルツハイマー病の脳組織では歯周病の原因となるポルフィロモナス菌(のDNA)とそれによって産生される酵素(ジンジパイン)が認められる。
②それらの菌(と酵素)のレベルとアルツハイマー病に関連すると言われるタウ蛋白とは関連する。
③上記の酵素(ジンジパイン)によりタウ蛋白が障害されることが分かっている。
④マウスではポルフィロモナス菌の感染と脳内への侵入により、アルツハイマー病に関連するアミロイド斑の形成が認められる。
⑤ポルフィロモナス菌による酵素(ジンジパイン)を阻害する因子による治療で、菌の感染やアミロイド班の原因物質の蓄積、細胞の炎症を減少させることができる。
以上の根拠により、歯周病の原因菌がアルツハイマー病の病態に関連していることや、ジンジパインの阻害薬がアルツハイマー病の治療の選択肢となる可能性について言及しています。
今後の証拠によってはアルツハイマー病の治療選択肢が増える可能性を感じさせる論文でした。