自殺予防に関して、家族や友人の関わりが大切であることは以前から指摘されてきました。他者との絆の少なさ、社会的な孤立は自殺の危険因子として重視されます。
色々な理由があって、そういった関係が失われているとき、頼りにできるのが公的な機関や福祉サービスのみになることもあり得ると思います。
自殺を考えるようなぎりぎりのところで他者が行うメッセージの送信がどれくらい助けになるのか調べたのが、今回のご紹介する研究です。
Effect of Augmenting Standard Care for Military Personnel With Brief Caring Text Messages for Suicide Prevention A Randomized Clinical Trial
軍人に対する強化型標準治療(気遣いを示した短いメッセージを伴う)の効果
軍隊(陸海を含む)での調査で、希死念慮を伴う658人(そのうち291人は自殺未遂の既往あり)が対象となりました。
メッセージの送信を行うグループと通常の治療のみを行うグループに分けて、送信を行う場合には本人のことを気遣っていることを示すメッセージ(caring conntact)を治療開始日、第1週、その後1,2,3,4,6,8,10,12か月後、誕生日の計11回送りました。
①現在の希死念慮の激しさ、救急受診の回数には目立った影響はありませんでした。
②希死念慮を抱く人の割合と自殺企図を行う人の割合はメッセージを受け取ったグループのほうが低下していました。
自殺予防の指標の各要素に、上記のような矛盾がありました。
つまり、一定の効果を認めるかもしれないが、現在の希死念慮を和らげる効果までは認めないという、有効性の判断に迷う結果となりました。
もちろん個別にどのような内容のメッセージを行うかで結果は異なると思われますが、月に1回程度相手のことを考えながらメッセージを送るだけで、少しでも生きる力になる可能性があるのなら、このような試みは続けるべきであるように思われました。