以前から統合失調症などの精神病性の疾患では、罹病機関が長期にわたると病像が変化することが指摘されてきました。
当初の幻覚や妄想が目立たなくなり、遂行能力や理解・判断能力の低下が顕著となることがしばしば認められます。
臨床的には頻繁にみられる病像の変化ですが、ほとんど基礎的な研究は存在せず、どのような脳の変化が生じているのか、あまり明確ではありません。
統合失調症における認知機能の基礎となる脳内ネットワークの老化促進
240名の統合失調症患者と178名の健常者が分析の対象となりました。
脳の働きを知るために機能的画像検査を全例に施行し、脳内ネットワークの機能的な評価を行いました。
①比較的長期に罹病している統合失調症患者では脳内ネットワークの有効性(efficiency)が低下しており、脳の老化が進行していると考えられた。
②罹病機関の短い統合失調症患者では上記のような著しい老化の進行がなかった。
上記のような結果から、より早期に統合失調症の治療を開始し、脳内ネットワークの機能的低下を防げる可能性について指摘しています。
精神病性の著しい病態を長引かせると生活にも大きな支障がありますが、上記のように脳自体にも不可逆性の変化を生じるようです。早期治療の重要性を再認識しました。