家族を構成している成因を個人個人でみるのではなく、全体の中での役割や集合の中でどのように機能しているのかに着目して介入する方法を「システムズ・アプローチ」と言います。
この本は不登校を含む様々な家族問題について、システムとしての視点をもって生き生きとした物語のように叙述しています。
このような「システム」という言葉を持ち出すと、個人が無視された組織重視の方法のようなイメージが湧いてしまうかもしれませんが、実際には逆に個人を重視するがゆえに、どのように家族という組織の中で埋没せず(損な役回りやつらい立場に置かれたりせず)生きていけるのか、家族のそれぞれが望む未来とは何なのかを大切にしたアプローチであると言えます。
この本の「はじめに」で、「システムズ・アプローチ」の中心的な考え方について述べた部分を少し抜粋させてください。
「システムと呼んでいるものは、ことの善し悪しではなく、そのように存在するものです。そしてそれがたくさんの他の要素と絡まって現状を作っているのです。ならば解決を目指して、次に行えることは決まってきます。何がよくないかを考えるのではなく、何が一つ異なる方法を試みてみることです。そして現状を変化させることです。無論それにはセオリーやノウハウもあるのですが、いちばん大切なのは、因果論以外のこういうとらえ方があることを知ることです。」
問題が起こっているときに「どうして」「なぜ」と問うことも大切なことはあるかも知れませんが、原因追及や犯人探しの過程が有効でなかったからこそ、相談施設や医療機関に問題が持ち込まれている場合も多く存在します。
実はこの時点でこれまで馴染んできた因果関係による問題解決の方法を一旦忘れるようにして頂く必要があるのですが、これがとても難しいと感じます。
「システム」を念頭にお勧めしたことは実際に取り組んでいただけると、ほとんどの場合は何らかの状況変化が生じるのですが、(おそらくは導入の方法がまずくて)やっていただけないことが多いのです。
目次の題名を抜粋させてください。
「決定、反応、人と人との境界、父親さまざま、母親の不安 妻の不満、夫婦で両親、ストレス、健全と不健全、ペット、空き椅子、期待、「いじめ」る・られる、セラピスト、知的障害と…。、全家族面接、健康な家族」
抽象的な題名もありますが、内容が「不登校」のみではなく、家族問題全般に渡っていることは分かって頂けると思います。
この本はこのように「不登校」を本人が学校に行かないという問題だけではなく、家族の問題としてとらえています。
学校にに行かないのは本人の自覚や気分の問題として考え、どうしても、この視点を獲得できないご家族も多いのです。
しかし、単に登校を促すという視点のみではなく、家族がそれぞれの立場で関わりながら「家族をやる」ために、本人が学校に行かないことの意味を家族全員で考えていくことは非常に有用だとは思います。