高齢者の不眠治療として望ましいのは、昼間の活動性を向上させ、できるだけ昼夜のリズムを保ったり、排尿障害や疼痛などの睡眠を阻害する要因を軽減させることだと思います。
決して薬剤による解決は優先されるべきではないのですが、もうすぐ高齢者の睡眠導入・維持のための薬剤に副作用の少ない新しい選択肢ができるかもしれません。
Lemborexantと言われる薬剤で、今までの睡眠導入剤とは異なるしくみを持っています。
通常、私たちの脳内では睡眠のリズムのほぼ24時間の周期で保つしくみが存在しますが、この薬剤はその中のひとつであるオレキシン受容体を介する経路をブロックすることにより、自然な睡眠リズムを取り戻すことができると言います。
これまで指摘されていた転倒に結びつくようなふらつきや、昼間の過度の眠気が少なく、これまでの臨床試験では良好な結果が得られています。
かなり以前のものになりますが、以下に臨床試験の一つをご紹介します。
睡眠障害治療のためのレムボレキサント(双方向オレキシン受容体阻害薬:DORA)
291名の対象者がプラセボ(偽薬)とLemborexantを使用するグループでランダムに振り分けられました。
結果として、プラセボと比較し、主観的・客観的な睡眠効果(sleep efficacy: SE)、睡眠導入までの時間、睡眠の維持(覚醒の回数)において大きな改善を認めました。
また、後の別の試験では良く使われる睡眠導入剤であるゾルピデム(商品名:マイスリー)に比較して、覚醒の回数が少なく、ふらつきがほとんどないことが示されています。
特に非常に副作用が少ないことから、今後高齢者に向けて使用が検討されやすい睡眠援助の方法になることが予想されました。