全体として、不登校やひきこもりになっている本人の深い理解と共感を感じます。
著者自身が青年期から数年間ひきこもりの時期を経験されているということが大きいのかもしれませんが、助言やはげましが常に「いっしょにやっていこう」という姿勢で発信されているため、押し付けられている印象が少なくなっています。
強く言われても「この人が言うのならまあ、やってみようか」と少し聞き入れることができそうな雰囲気です。
この本は基本的に本人の立場には立とうとしていても、「人の目」を気にしているところが少なく、思い切って書かれている印象が強いです。多少強引なところがあっても、ついていける感じはします。
主観的な「感じ」について、何度も書いてしまいましたが、このような感想を引き出すような「アツイ」ところが、著者の姿勢から感じられます。
もう少し、客観的に内容についてご紹介すると、不登校・ひきこもりの状態をその深刻度によって「赤信号・黄信号・青信号」に分類し、さらに大きく所属する世界を「考え過ぎる世界」と「行動する世界」に分けて、対応を具体的に述べています。
状態像によって、細かく親身になって助言が書かれているため、分量的には多くなっており、全体で500ページとなっています。
最大の特徴は、状態によって大きく異なる対応を具体的に数多くの事例や自身の体験を交えて伝えている点です。どこかで、自分や助けたい人が困っていることに関する情報を見つけることができる網羅性を持っています。
それに加えて、上記のような「アツイ」部分があり、行動を修正するための動機を刺激してくれる本だと思います。
この本の雰囲気や姿勢をお伝えするために、「はじめに」から抜粋させてください。
「……人は自信を失うと行動しなくなります。本当は行動できるのに、プライドだけが高く、現実の自分とのギャップにため息。そして、同世代との格差がどんどん開き、絶望を感じます。……(中略)……そのような人たちに対して、『不登校はいけない』『ひきこもりはいけない』と叫ぶのは簡単です。でも、その言葉で本人や家族が救われることはありません。だから、僕は人生の道に迷った本人や家族に必要なのは『道しるべ』だと思っています。」
確かに、それぞれの状態に合わせて提示されている助言・呼びかけや具体例が「道しるべ」のような役割をしてくれそうです。さまざまな点でおすすめの本です。