病状から検討し、うつ病やパニック障害、強迫性障害等の薬物療法をすすめる時にしばしば聞かれる質問があります。
“その薬(=抗うつ薬)は太りますか?”
この問いに対して答えることはなかなか難しく、体重の増減は個人差があります。
それで、どうしても“人によって違います”という答えになってしまうのですが、少なくとも長期的視野に立つと、SSRIという最も良く使われる種類の抗うつ薬については、良く引用される研究結果があります。
今回は、SSRIを長期に渡って服用したときにみられる体重変化を大規模に調べた研究をご紹介します。
抗うつ薬の服用と10年追跡した体重増加の結果
男性136762人と女性157957人が調査の対象となり、10年間に3回以上のBMI(体格の指標)が測定されました。
結果として、5%以上の体重増加を認めた割合が、抗うつ薬を処方されているグループでは100あたり11.2(人年)、非処方グループでは100あたり8.1(人年)と、抗うつ薬を服用している場合に、より体重が増加することが示されました。
このような結果が信頼性の高い研究で得られているので、少なくともSSRIについては、長期的に太る可能性を説明しなければならないと感じています。
ただ、抗精神病薬等、抗うつ薬よりも体重増加がもっと多い割合で生じる薬物もあり、上記の結果(5%以上の体重増加が、10年間の追跡で100人あたり11.2 vs 8.1)から考えても、敢えて強調して説明するべき副作用かは疑問があります。
すべての薬剤で言えることですが、患者さんにとっての期待できるメリットとデメリットをできるだけ公平に評価した上で処方について相談させて頂けたらと思います。