WHOの新しい認知症予防に関するガイドラインが発表されています。
このガイドラインは認知症に関わる多くの医療従事者・援助者・政策担当者等が知識の基礎とするべきものとされており、これからの認知症予防を考える上で把握しておくべき内容と言えます。
認知能力低下と認知症のリスク軽減について(世界保健機構の予防指針)
上記のリンクより、多言語のPDF版がダウンロード可能となっています。(英語版は96ページ)
内容を概観してみると
・身体的運動:現在、認知能力低下のない成人に、認知能力低下を予防するために、特に日常的な運動習慣をつけることが推奨される。
・食事:現在、認知能力低下のない成人と軽度認知障害の場合に、いわゆる“地中海式食事療法”と言われる内容が推奨される。多くの食事療法が安全で、副作用が少ないが、過剰なビタミンEとタンパク質摂取は望ましくなく、期待した効果が得られない。
・アルコール:乱用を防止することが重要だが、どのような摂取が望ましいのか、また認知症リスクから考えたときに許容できる摂取量については、証拠が少ないため明言できない。
・肥満予防:身体的運動や食事療法より、やや証拠の程度は落ちるが、体重管理が認知症予防につながる可能性がある。
・糖尿病、脂質異常症:薬物や生活様式の変更による血糖管理や中年期における脂質高値の改善は認知症予防に効果があると考えられる。
・うつ病:一部でうつの改善が認知症予防に効果があるとされているが、抗うつ薬を服用することによって、より認知症のリスクが低下するのかは不明である。
その他、聴覚の援助についても言及されていますが、他のガイドラインでは推奨されているものの、まだ証拠は十分ではないとしています。
認知症リスクに関する論文は、エビデンス・レベル(証拠のとして価値)の様々なものが次々と発表されます。
認知症治療(予防)に関して言及するときには、このようなガイドラインを最近の知見のまとめとして参考にできると望ましいと思われました。