以下はADHD(注意欠陥多動障害)の治療に使われる代表的薬剤であるコンサータ(メチルフェニデート)の添付文書からの抜粋です。
18歳未満の患者 通常、18歳未満の患者にはメチルフェニデート塩酸塩として18mgを初回用量、18〜45mgを維持用量として、1日1回朝経口投与する。増量が必要な場合は、1週間以上の間隔をあけて1日用量として9mg又は18mgの増量を行う。なお、症状により適宜増減する。ただし、1日用量は54mgを超えないこと。 18歳以上の患者 通常、18歳以上の患者にはメチルフェニデート塩酸塩として18mgを初回用量として、1日1回朝経口投与する。増量が必要な場合は、1週間以上の間隔をあけて1日用量として9mg又は18mgの増量を行う。なお、症状により適宜増減する。ただし、1日用量は72mgを超えないこと。
日本では以上のように、18歳未満で54mg、18歳以上で72mgを最大の用量としていますが、このような用量の設定にはどのような根拠があるのでしょうか?
今回は様々な文献からメチルフェニデートの用量についての医学的証拠を集めようとしたメタアナリシス(複数の研究を統合してより信頼性の高い証拠を得ようとした研究)をご紹介します。
Evaluation of Methylphenidate Safety and Maximum-Dose Titration Rationale in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder A Meta-analysis
ADHD治療におけるメチルフェニデートの安全性と最大用量の設定に関する正当性の評価
11のランダム化比較臨床試験と38のコホート研究が分析されました。
それぞれの研究で多くの範囲の中枢刺激薬の用量設定を認めましたが、それぞれの範囲設定には正当化の根拠を見出すことができませんでした。
つまり、どの用量がもっとも適切であるのか、あるいはある量からはデメリットがメリットを上回るなどの用量と効果に関する医学的証拠に欠けていることが分かりました。
また、現在設定されている用量の中で認められる代表的な副作用として、不眠・食思不振・頭痛・腹痛を認め、いずれも重篤なものではありませんでした。
異論はあるかもしれませんが、上記のような分析から、現在のメチルフェニデートの用量設定はかなり恣意的な要素を含んでいる可能性が示されました。
今後は、実際の効果がどのような用量設定のとき(副作用の少ない範囲で)最大化されるのか、より精度の高い証拠が求められていると考えられました。
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