「イライラする」という症状は、「落ち込み」や「不安」などと並んで、感情に関する主訴として多い表現です。
しかし、どのような疾患で特徴的な症状なのか、どのような「イライラ」が存在するのか等、症状としての詳しい概念化がされていないのが現状です。
今回は「イライラ」について、長期の経過をしらべて、特徴に基づいて妥当な類型化を試みた研究です。
発達遺伝学的アプローチに基づいた「イライラ」の新しいタイプ分け
イギリスのコホート(研究対象となる集団)で7924人の長期にわたる(7歳から15歳の4時点)「イライラ」の特徴を追跡しました。
そしてそれらと遺伝負因としての「多遺伝子リスクスコア:polygenic risk scores 」、ADHDやうつ病の診断との関連性を調べました。
「イライラ」の特徴をタイプ分けしたところ、大きく①早期に出現し強いイライラが持続する経過 ②思春期に出現し徐々にイライラが増加する経過 に分かれていました。
そして、①のタイプは、男性に多く、子どものADHD、ADHDの遺伝負因と関連していました。
また、②のタイプは、女性に多く、思春期のうつ、うつ病の遺伝負因と関連していました。
上記のように表現としては同じ「イライラ」とされるものでも、①のように神経発達領域(ADHD)に関連し、早期に出現するタイプと、②のように感情障害(うつ病)に関連し、思春期以降に出現するタイプに分かれることが示されました。
それぞれの「イライラ」で治療の方針も異なる部分があると思われ、原因に沿った対処を工夫することが望ましいと思われました。