乱用にあたるような大量の飲酒は、長期的にみて精神的悪影響を及ぼしますが、そうではない通常の飲酒(moderate drinking)は、循環器系疾患にとって有益に働いたり、寿命を延ばすのではないかという意見もあります。
適度な飲酒は精神的健康にとって良い影響があるような気もするのですが、はっきりとした答えは得られていません。
今回は、「適度な飲酒」が精神的健康に与える影響を、長期的飲酒パターンに分けて調べた研究をご紹介します。
Change in moderate alcohol consumption and quality of life: evidence from 2 population-based cohorts
適度な飲酒とQOL(生活の質)変化:2つのコホートにおける研究
中国(香港)とアメリカにおいて、合計4万人程度が調査の対象となりました。
性別や長期的な飲酒パターン(ずっと非飲酒、ずっと飲酒、飲酒を中止、飲酒を開始等)によって精神衛生の状態や変化がどのように異なるのか調べられました。
結果として、最も精神状態が良かったのが、性別にかかわりなくずっとアルコールを飲んでいない人たちでした。
また、2~3年の追跡で、最も精神状態が改善したのが、女性のアルコール中断者でした。
つまり、一般的に言われる「飲みすぎ」の状態でなくとも、非飲酒者は飲酒者よりも長期的な精神状態が良いようです。
元々精神状態の良い傾向のある人は飲酒する必要もないということもあるかもしれません。
少なくとも、一般的な話として「適度な飲酒は心の健康にも良い」というアドバイスはできないようです。