「SSRI(代表的な抗うつ薬)は重度のうつ病にしか効果がない」
そのように言われ、軽度のうつに対する治療において、中心的な抗うつ薬の使用が躊躇されることがあります。
今回は、これが本当なのか確かめたスウェーデンの研究をご紹介します。
ベースラインの重症度がSSRIの効果判定に与える影響:項目ごと、患者内でも事後分析
8262人が分析の対象となりました。効果判定が行われた薬剤にはシタロプラム(744人)、パロキセチン(2981人)、セルトラリン(1202人)、フルオキセチン(754人)が含まれます。
元々、軽度のうつ病(状態)では中核症状のみで、その他の領域への症状の拡大が認められない傾向があります。
よって、広範な範囲の症状を含めた指標で効果を測定すると、軽度のうつ病(状態)では、元々の状態(ベースライン)で0の数値が並ぶことになり、全体の改善の幅が小さくなり、必然的に「効果なし」の判定が出る可能性が高くなります。
このようなことを避けるために、今回の研究では、軽症のうつ病(状態)でも認める中核的な症状に絞って分析したところ、SSRIは軽症の場合でも有意な効果を発揮していることが分かりました。
だからと言って、軽症の状態にいつも抗うつ薬を処方するべきであるという話にはならないと思われます。
しかし、患者さんの実感としての症状軽減を中心に考えるならば、軽度のうつ病(状態)であっても、SSRIで症状が楽になる可能性は十分にあるという事実は認識するべきであると思われました。