若年者への抗うつ薬の有効性について疑問視されることがあります。
現在では思春期や比較的若い年代の方であっても抗うつ薬は有効であり、アクチベーション(自殺企図など望ましくない行動が活性化されてしまうこと)に注意しながら投与が行われています。
今回は、若年者のうつに対する治療として認知行動療法をベースに考え、それに抗うつ薬(フルオキセチン)を追加した場合と追加しない場合とでどのように効果が異なるのか調べた研究です。
若年者のうつにおける認知行動療法へのフルオキセチン追加療法
オーストラリア、メルボルンにおける調査で、15~20歳の重症うつを伴う153人が調査の対象となりました。
この調査は、ランダム化、二重盲検(投与する方もされる方も使用されているのが実薬か偽薬か知らない状態)、プラセボ対照、多施設という条件で行われ、上記の対象者が認知行動療法+フルオキセチン(抗うつ薬)と認知行動療法+偽薬のグループにランダムに振り分けられました。
認知行動療法は毎週50分のセッションとして行われ、4・8・12週目には効果の評価が行われました。
結果として、12週までの効果は、抗うつ薬を加えた場合とそうでない場合とで大きな違いを生じませんでした。
つまり、少なくとも若年者において、認知行動療法に抗うつ薬も加えた方が良いとする根拠はないことになります。
エビデンスとして標準的な比較的規模の大きな試験で上記のような結果が得られたので、若年者の重症うつに対しては、やはり認知行動療法等の心理療法をベースに行うべきであるという方針が考えられます。
結果は慎重に受け止めるべきだとは思いますが、すべての若年者のうつ病(状態)に対して、まずは心理的関わりを中心に検討するべきであると思われました。