統合失調症に対し、2種類以上の抗精神病薬を4週間以上投与しても十分な症状改善が得られない場合を「治療抵抗性」と呼ぶことがあります。
この治療抵抗性の統合失調症に用いられる代表的な薬剤として、クロザピンがあります。
強い抗精神病効果がある反面、無顆粒球症や糖尿病等の重篤な副作用があるため、日本では一部の施設でしか使用が認められていない薬剤です。
今回は、このクロザピンについて、多くの研究をまとめて総合的な評価を行おうとした分析をご紹介します。
Association With Hospitalization and All-Cause Discontinuation Among Patients With Schizophrenia on Clozapine vs Other Oral Second-Generation Antipsychotics A Systematic Review and Meta-analysis of Cohort Studies
クロザピンと他の第二世代抗精神病薬に関する入院や治療中断についての比較
109341人の対象者を含む63のコホート研究(コホートと呼ばれる一定の条件を満たす集団を対象とする研究)の結果が分析されました。
まずは、クロザピンとその他の第二世代抗精神病薬(リスペリドン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピンなど)を入院や治療中断等の好ましくない事象について比較しました。
結果として、クロザピンのほうが、より重症の患者を対象としているにも関わらず、入院や中断が少ないことが分かりました。
さらに、症状の軽減が得られるのか、有効性に関する比較を行ったところ、概してすべての第二世代抗精神病薬よりも、クロザピンのほうが良い結果を得ていました。
一方、クロザピンでは体重増加やBMI上昇、糖尿病の発症などの有害事象が多いことも示されました。
総合評価としてはクロザピンは他の第二世代抗精神病薬より、入院などの悪化による事象が少なく、症状軽減をもたらす可能性が高いことが示されましたが、身体的なリスクに十分な配慮を要する薬剤であり、適応を慎重に検討するべきであると考えられました。