以前から、女性において、統合失調症の経過と女性ホルモン濃度との関連が指摘されて来ました。
エストラジオールという女性ホルモンの皮膚に貼付するパッチ剤の効果もある程度示されていたのですが、なかなか大きな規模での追試ができない状況が続いていました。
今回は、このパッチ剤の効果をしっかり見極めようという意図での研究をご紹介します。
Effect of Adjunctive Estradiol on Schizophrenia Among Women of Childbearing Age A Randomized Clinical Trial
妊娠可能年齢の女性に対する統合失調症エストラジオール追加療法の効果
モルドバ共和国における研究で、統合失調症を発症した200人の女性(平均年齢:38歳)が調査の対象となりました。
通常の薬物療法に加えて、200μgのエストラジオールパッチ剤を用いるグループ100人と偽薬のパッチを用いるグループ100人にランダムに振り分けられ、その効果がみられました。
結果として、エストラジオールパッチを用いたグループの方が明らかに症状軽減(PANSSと呼ばれる統合失調症の評価で良く使用される指標で測定)が大きく、妊娠可能年齢の女性に対してはホルモンを含むパッチ剤が有効ではないかと思われました。
しかし、より詳しく見たところ、妊娠可能年齢の中でも38歳以上の女性でしか効果を示しておらず、有効な年齢層がかなり狭い可能性も示されました。
性別や年齢は限定されてはいますが、ホルモンの貼付剤は使用に対する心理的な抵抗も少ないと予想され、有効な治療の選択肢として一般的に用いることが可能になることが望ましいと思われました。