これまでの研究で、毛髪の中に含まれるホルモンであるコルチゾールが、慢性のストレスや年少時のトラウマ等の指標(バイオマーカー)となり得ることが示されています。
今回は、特に若年者に焦点をあてて、毛髪中のコルチゾールが、うつ症状の目印になるか調べた研究をご紹介します。
若年者における毛髪中のコルチゾールとうつ症状
11~17歳の若年者432人が調査の対象となりました。
毛髪中のコルチゾールを測定し、うつ症状の指標(9-item short-form of the Center for Epidemiologic Studies-Depression scale)との関連を調べました。
結果として、毛髪中のコルチゾールとうつ症状は単純な直線的関連(例えば、片方が大きい値であれば、もう一方も増加する関係)にはありませんでした。
しかし、興味深いことに、コルチゾールが高過ぎる場合と、低過ぎる場合の両方で、うつ症状が多くなることが示されました。
コルチゾールはストレスを受けたときに分泌が増えることから「ストレスホルモン」と呼ばれますが、今回の結果をみる限り、「ストレス⇒コルチゾールの増加&うつ症状」というような単純な図式ではないようです。
また、今回の研究は、因果関係まで明らかにするものではありませんが、コルチゾールの濃度を制御しているホルモン調節のしくみ(視床下部ー下垂体ー副腎系)の異常とうつ症状が何らかの関連をもつかもしれないという示唆を与えたものと言えそうです。