胎児や母体が危険にさらされる可能性が高い場合、様々な理由で通常の経腟分娩ではなく、帝王切開が選択される場合があります。
帝王切開には大きく分けて、前置胎盤(胎盤が子宮の出口を塞いでいる)等、前もって経腟分娩による危険が予測されている場合に行われる「予定帝王切開」と、胎児の低酸素症等、分娩中に胎児や母体の生命が危険にさらされた時に行われる「緊急帝王切開」があります。
また、場合としては少ないと思われますがより安全で負担の少ない分娩を求めて、厳密な意味では医学的な適応ではない帝王切開が行われることがあります(主として海外の事例)。
今回は、帝王切開が行われた場合とそうでない場合とで発達障害など危険率を調べた多数の研究を統合した分析(メタ・アナリシス)を紹介します。
Association of Cesarean Delivery With Risk of Neurodevelopmental and Psychiatric Disorders in the Offspring A Systematic Review and Meta-analysis
帝王切開と神経発達障害・精神疾患の危険性との関連
2000万以上の分娩例を含む61の研究が分析の対象となりました。
中でも危険率の増大に関して信頼性が高いデータとしては、自閉症スペクトラム障害の33%増、ADHDの17%増がありました。
他にも、研究の数や信頼性はやや低下しますが、知的障害、強迫性障害、チック障害、摂食障害に関しても危険率の上昇を認めました。
このような結果を解釈するときに、非常に重要なのは「帝王切開⇒発達障害の増加」という因果関係でみるのではなく、帝王切開の様々な背景について検討することであると思われます。
この研究自体でリスクを判断するというより、分娩に伴う発達障害のリスク評価の入り口となるべき知見であると思われました。