高齢者の精神症状に対する治療は、可能な限り非薬物的な治療を優先し、必要と判断された場合でも、副作用に対する細心の注意をしながら行う必要があります。
比較的若い年齢層よりも多くの副作用が少量の使用で出現しやすく、傾眠やふらつき、転倒に対しては特に注意を要します。
以上のような副作用については、睡眠薬や抗不安薬・抗精神病薬といった種類の薬剤で特に警戒され、抗うつ薬については比較的安全であると考えられています。
今回は、抗うつ薬使用の影響について、多くの研究を統合した分析(メタ・アナリシス)をご紹介します。
高齢者の抗うつ薬治療による副作用について
65歳以上のMDD(大うつ病)と診断された高齢者の抗うつ薬治療に関して研究した19の論文が対象となりました。
抗うつ薬として良く使用されるSSRIやSNRIと略称される抗うつ薬や現在使用される主な抗うつ薬(ブプロピオン、ミルタザピン、トラゾドン等)が研究に含まれていました。
また、分析の対象となった副作用としては、不整脈、認知障害、転倒、骨折、入院、QT延長(心電図異常)、離脱症状等がありました。
結果として、SSRIは副作用について偽薬と大差がなく、SNRIについては、副作用と考えられる事象の合計が増加していました。特にデュロキセチンについては、転倒の増加が認められていました。
高齢者に対しても比較的安全とされている抗うつ薬ですが、中には注意が必要なものが存在し、(使用がやむを得ない場合でも)種類や用量等に関して慎重に検討する必要があると思われました。