意図的にユーモアを診察やカウンセリングの中心的要素として据えるのは、非治療的と思われますが、患者さんとの相談の中で自然とユーモアの要素が出現したときには、何らかの治療的変化をもたらすきっかけになることも多いように感じます。
今回は、心理療法において、ユーモアの体験がどのように面接過程に影響するかを調べた研究をご紹介します。
個人的心理療法の有効性とユーモアとの関連
ベルギーにおける研究で、少なくとも10回以上のセッションを経験した110人のクライアントが調査の対象となりました。
セッション中のユーモアを伴う体験の強度と頻度、心理療法の有効性、信頼関係、希望の感覚、セッションに参加する喜びについて測定されました。
結果としては、ユーモアの体験と心理療法の有効性(治療者とクライアントの両方から捉えた結果)は明らかな関連を示していました。
この傾向は、精神疾患の程度が著しい部分的集団においても、(ユーモアを感じることが少ない集団であるにも関わらず)同様に認められ、ユーモアの有効性が重症度によらず一貫していることが分かりました。
冒頭でも述べたように敢えてユーモアの要素を多くしようと心がけることは、心理療法の主眼を歪ませる結果になるのではないかと懸念されますが、自然発生的なユーモアまで、邪道な要素として排除する必要はないように考えられました。