双極性障害に対する治療として、日本では主として薬物療法のみによる症状のコントロールが行われています。
双極性障害においては、生物学的要因が大きく、薬物による神経活動(及び神経伝達物質の授受)の調整が重要であるという見解(あるいはそれに基づくと思われる治療行為)が主要な立場であると考えられます。
しかし、覚醒‐睡眠リズムや社会活動の様態が、悪化や寛解導入の鍵となるケースも多く、何らかの心理療法的アプローチを援助的にでも用いると治療に役立つように思えます。
今回は、双極性感情障害に対する心理療法(非薬物療法)について多くの文献を概観した分析結果についてご紹介します。
双極性障害に対する根拠に基づいた心理療法
双極性障害に対する心理療法(非薬物療法)のランダム化比較試験を集め、分析の対象としました。
結果として、有効性に関して強い根拠があると考えられたものには、心理教育、認知行動療法、家族療法、対人関係‐社会リズム療法、当事者相互援助プログラムがありました。
特に対人関係‐社会リズム療法については、他者との関係を円滑に(症状を賦活する要素を最小限に)し、生活全体を整える上で大きなメリットがあると考えられます。
また、薬物療法のみと薬物療法+心理療法を比較したところ、明らかに心理療法を加えた方が治療効果が大きく、この点は多くの試験で一致しており、より寛解までの期間が短く、再燃までの期間が長く、機能的予後を改善していました。
特に医療現場においては、薬物調整が主で、時間も限定されていますが、何らかのかたちで心理療法的なエッセンスを取り入れられると望ましいと考えられました。