抗血栓薬は血管内の血栓形成を予防することによって、脳梗塞などの血管イベントを減少させることが主な役割とされています。
よって、梗塞性の病変などが主な原因となる血管性認知症に対しては有効であると考えられてきましした。
今回は、アルツハイマー病に関しても、抗血栓薬であるダビガトラン(商品名:プラザキサ)の長期投与が有効ではないかという内容の論文をご紹介します。
アルツハイマー病のマウスを用いた研究で。1年間の抗血栓薬投与による変化が調べられました。
迷路を用いた検査成績、脳の血流、血栓の材料となるフィブリン、アルツハイマー病の病態に関与するアミロイドの蓄積、血液脳関門と言われる脳を脳外からの物質から守るしくみについて分子/細胞レベルで、経過観察が行われました。
結果として、抗血栓薬の長期投与を行った個体では、記憶力の低下、脳血流の低下、血栓の形成が少なく、さらにアルツハイマー病に関連するアミロイド斑の形成についても23.7%の軽減を示していました。
このようなことが生じるしくみとして、現在のところ血流が保持されることによって、神経細胞周囲の病的変化(アミロイド蓄積やグリア細胞の変化など)が低下することが想定されています。
抗血栓薬の人間における治療効果が証明されるためには、今後長い道のりが予想されます。現在行われている薬物療法からは違う方面からのアプローチの可能性を感じさせる開拓的な内容の研究と思われました。