双極性障害には、気分の高揚と活動性の亢進のある躁の時期がはっきりしているⅠ型と、躁があまりはっきりしないⅡ型とがあります。
そして、両方のタイプで何らかの睡眠障害を伴うことが多いのですが、そのようなタイプの違いが睡眠のパターンとどのような関連があるのかは分かっていません。
今回は、睡眠の傾向を表す“多遺伝子リスクスコア”と呼ばれる遺伝上の指標に関して、双極性障害のタイプ、健常者について比較を行った研究を紹介させてください。
睡眠の傾向を表す遺伝子上の指標に関する双極性障害のタイプ、健常者グループの比較
イギリスとスウェーデンで行われた研究で、双極性障害に罹患した4672人と比較対照としての健常者5714人が調査の対象となりました。
睡眠の傾向については、不眠・睡眠時間の長さ・昼間の眠さ・基礎的な睡眠リズムに関連する“多遺伝子リスクスコア”が調べられました。
結果として以下のことが示されました。
①双極性障害のうち躁の時期がはっきりしているⅠ型では、比較的長い睡眠が必要な遺伝子の傾向があった。
②躁の時期がはっきりしないⅡ型においては、不眠の傾向と関連する遺伝子的傾向があった。
③上記の傾向は、イギリスとスウェーデンの両方で確かめられた。
④昼間の眠さと基礎的な睡眠パターンを表す遺伝子と双極性障害のタイプとは関連性がなかった。
上記の結果からすると、双極性障害のタイプと睡眠の傾向を示す遺伝子とは何らかの関連があり、はっきりとした躁の時期の有無と睡眠の傾向は共通の遺伝的背景を持つ可能性があると考えられました。
単に双極性障害に合併する睡眠障害の治療に役立つだけではなく、より深く遺伝子レベルから双極性障害のタイプを理解するきっかけになりうる研究であると思われました。