欧米では、うつ病で薬があまり効かなかった時の選択肢としてTMS(磁気刺激)が広まっていますが、日本ではまだ一般的とは言えません。
今回は、TMSの実地臨床における有効性を確認した論文(2020年8月)を振り返ってみます。
大規模なうつ病登録資料で見たTMS(経頭蓋磁気刺激療法)の臨床的転帰(効果)
18歳以上のうつ病患者5,010人(103の施設)が分析の対象となりました。
患者本人の主観的症状変化(PHQ-9)と医療者の客観的評価(CGI-S)の変化を調べました。
結果として、以下の内容が示されました。
①「効果あり」をPHQ-9の点数(高い点数で症状が重い)が50%以上低下と定義した時、「効果あり」の割合は58~83%だった。
②「寛解(かんかい)」をPHQ-9の点数5点以下と定義した時、「寛解」の割合は28-62%だった。
③女性やTMSの実施回数が多い場合で、より良い効果を認めていた。
つまり、“TMSの実施による治療効果は、少なくとも6割近くで大きく改善、ほとんど症状がなくなる場合も(3~6割)ある”と言えそうです。
今までも、有効性のデータは多くありますが、実地臨床の大きな規模で確認されていることや、患者本人と客観的評価の両者が示されていること(その両者は概ね一致)の意味が大きな研究であると思われました。
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