手術後や急激な環境の変化、認知症等に伴って日内変動のある意識障害と精神症状が生じることがあり、“せん妄”と呼ばれます。
せん妄の状態が起こっている時には、意識障害が生じているので認知能力は低下しているように見えますが、実際に長期的視点でせん妄が認知能力低下の原因になり得るのか分かっていません。
今回は、「せん妄⇒長期的認知能力低下」が成り立つのか、その間には因果関係があるのかについて検討した研究(メタ・アナリシス)をご紹介します。
せん妄と長期的認知能力低下の関連
基準を満たした24本の研究(3562人のせん妄経験者と6987人の健常者を含む)が分析の対象となりました。
結果として、以下の内容が示されました。
①術後の場合でも、そうでない場合でも“せん妄”を経験することは、その後の長期的認知能力低下と関連していた(その効果量として計算されているHedge's gと呼ばれる値は0.45)。
②さらにサブグループ(部分的集団)を用いた詳しい分析では、せん妄が単に並行して起こっている事象ではなく、認知能力低下を引き起こす要因として考えられました。
このような結果をみるときに、実際の因果関係のしくみが分かるまで信じることが難しいと思われます。
しかし、少なくともせん妄が、一時的な病態としての意味だけでなく、長期的な認知能力の予後に影響を与える可能性を把握しておく必要はあると考えられました。
#せん妄
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