睡眠薬としては、様々な弊害が指摘されながらも、ベンゾジアゼピン系薬剤が頻用されているのが現状です。
ベンゾジアゼピン系薬剤はGABAと呼ばれる抑制系の神経を介して睡眠をもたらす仕組みを持っており、歴史的には従来の薬剤に比較して、依存性や身体的な影響が少ない非常に有用な睡眠薬として登場しました。
しかし、最近では眠気の残存や長期使用による依存性や注意集中・記憶・運動機能への影響など、様々なリスクが強調されるようになっています。
このような経過の中で、新しい仕組みによる睡眠薬が開発され、そのうちの一つにオレキシン受容体拮抗薬というものがあります。
2014年に発売されたベルソムラ(スボレキサント)がそのうちの一つとして既に使用されていますが、上記のGABAの亢進によるものと違って、オレキシンによる興奮系の入力を阻害することによる「自然な眠り」をもたらすとされています。
昨年末(2019年12月)に、アメリカで同様のしくみをもつ薬剤(レンボキサント)が承認されたのでご紹介させてください。
アメリカのFDAがエイザイのデエビゴ(レンボレキサント)を承認
レンボレキサントは上記のように、オレキシン受容体拮抗薬と分類され、興奮系の入力であるオレキシン受容体に拮抗することにより効果を発揮します。
イメージで言うとベンゾジアゼピン系薬剤のように抑制を増やして無理に眠らせるのではなく、興奮を減らして「自然な眠り」ともたらすと說明されています。
実際の臨床で、この種の薬剤によってもたらされる眠りが「自然」かという問題はありますが、少なくとも試験上は眠りの効果や副作用などの点で、既存の薬剤(ゾルピデムと比較)よりも優秀な結果を示しています。
特に、外部からの刺激による覚醒に影響を与えない(目覚ましなどで起きようと思ったときに起きられる)、離脱作用が少ない(止めようと思ったときに止めやすい)という点で、優れた点を指摘されています。
今後、ベンゾジアゼピン系薬剤が徐々に使用されなくなり、新しいしくみの薬剤がより広く処方されることになると思われますが、単に新しいというだけではなく、患者さんにとってメリットの大きなものが登場することが期待されます。
#薬物療法 #睡眠薬
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