高齢者の認知症症状のうち、興奮や他者への影響が大きい問題行動等を認知症の「周辺症状」(行動心理徴候)と呼ぶ場合があります。
この「周辺症状」(行動心理徴候)に対しては認知症に対する薬があまり有効でない場合も多く、抗精神病薬と呼ばれる薬剤を少量用い、興奮等の軽減を図ることがあります。
この抗精神病薬を使用した場合に、ふらつきや歩行障害による転倒、嚥下障害(誤嚥)、傾眠等が増えることが指摘されてきました。
今回は、上記のうち転倒のリスクとは関連するかもしれませんが、特にアルツハイマー病の患者さんに抗精神病薬を使用した場合の頭部外傷を受傷するリスクについて調べた研究をご紹介します。
アルツハイマー病における抗精神病薬使用と頭部外傷の関連
フィンランドにおける研究で、抗精神病薬の使用以外の条件を揃えた21,795組のペアが研究の対象になりました。
上記のペアで抗精神病薬を使っていた場合とそうでない場合で、頭部外傷(転倒などの事故により頭に傷を負った場合の総称)と外傷性脳損傷(頭部を受傷することによって脳にまで損傷があった場合の名称)のリスクを調べました。
結果として、頭部外傷については1.29倍、外傷性脳損傷については1.22倍のリスク上昇があることが分かりました。
また、比較的転倒が少なく高齢者で使用されることが多いクエチアピンで、同じ抗精神病薬のリスペリドンと比較して1.60倍のリスク上昇がありました。
クエチアピンについては疑問が残りますが、抗精神病薬投与は頭部外傷/ 外傷性脳損傷のリスク上昇に結びつくことが確認されました。
家庭や施設で生活していく上で、抗精神病薬投与がやむを得ない場合もありますが、身体能力への副作用を最小限にできるよう、用量や種類の選択に慎重さを要すると考えました。
#アルツハイマー病
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