急性のコロナウィルス感染症による呼吸器症状が治まった後にも、長期に渡って呼吸器を始めとする広範な症状が残存することがあり、Long COVIDと呼ばれています。
このLong COVIDによる神経症状には、認知機能の障害・頭痛・めまい・嗅覚障害・味覚障害・不安やうつ症状があります。
今回は精神症状の中でも比較的多いとされる不安症状について、その背景となる生物学的な変化を調べた研究をご紹介します。
COVID-19とSARS-CoV-2感染続発症における血清上の生物学的指標
COVID-19脳炎による入院患者やCOVID-19後の神経症状のある患者を含む64人と、比較対照として健常者が研究の対象となりました。
上記の対象者に関して、血清で分かる生物学的なデータを比較しました。
結果として、以下のことが示されました。
①COVID-19脳炎で入院した患者では特に神経線維へのダメージや炎症を示すニューロフィラメント軽鎖(pNfL)やグリア線維性酸性タンパク質が高くなっていました。
②脳炎患者では神経続発症の患者よりもSARS-CoV-2ヌクレドカプシド抗原(ウィルスの一部で免疫反応として感知できる部分)が高くなっていました。
③神経続発症患者のうち、不安やうつが強い患者では上記のような各種血清学的指標から計算で得られる神経繊維指標(nuero glial score: he ratio of pGFAP to pNfL)が、症状が強いほど高くなっていました。
つまり、“病態によっても異なるが、COVID-19後には神経障害が起こり、不安症状が強い場合特有の変化があり得る”と言えそうです。
症状の背景が、データとして確かめられることで、患者さんの症状がより明確に定義され、治療や救済制度の対象となることが期待されました。
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