一般的に偽薬(プラセボ)が疼痛の治療に用いられることはほとんどありませんが、まれに実際には効用がないか、症状とは直接的関連のない内服薬や塗布剤を使用すると大きな改善効果を認めることがあります。
このような効果を“プラセボ効果”と呼びますが、今回ご紹介するのは、このようなプラセボ効果が、慢性的に疼痛のある患者でも健常者と同じ程度なのか調べた研究です。
慢性疼痛のある患者もプラセボ効果について、健常者と同程度の反応性・再現性を有する
慢性的に疼痛のある骨粗鬆症の60人、線維筋痛症79人と、疼痛のない健常者98人が研究の対象となりました。
プラセボ効果を確認するグループでは利き手に効用のないクリームを塗って、「このクリームは局所麻酔剤かもしれないし、そうでないかもしれない」と伝えて、「このクリームは効用がない」と伝えたグループと比較を行いました。
結果として、プラセボ効果を確認するグループでは慢性疼痛患者と健常者の両方で、
大きな痛みの改善効果を認め、その程度と再現性は慢性疼痛の有無で違いがありませんでした。
つまり、慢性的な痛みがあるからと言って、プラセボの効果が弱まるわけではないし、逆に被暗示性が高くなることによる効果の増大も認めないという結果でした。
治療に関する信頼性を考えると、偽薬を投与することの正当化は難しいと感じますが、実薬の副作用を考え、やむを得ない場合の選択肢となり得るのかもしれません。
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