拒食症(神経性食思不振症: anorexia nervosa 以下ANと表記)は薬剤の効果も限定的で、経過も長期に渡り、生命の危機を伴うことも多い疾患です。
うつや不安障害・感情制御の困難を伴い、一時的な体重コントロールのための介入以外は治療の効果が分かりにくい例が多く存在します。
今回は、治療抵抗性のANに対して深部脳刺激を用いた効果について調べた研究をご紹介します。
前帯状皮質脳梁下部の深部脳刺激による治療抵抗性神経性食思不振症に対する効果
AN(制限型と過食嘔吐型を含む)の診断を受けている16人(平均年齢34歳、平均経過18年)が対象となりました。いずれも、いずれも様々な治療に対して治療抵抗性の病歴を持っていました。
深部脳刺激の装置埋め込み術を行い、安全性とBMIの変化・うつや不安への影響について調べました。
結果として、以下の内容が示されました。
①16人のうち7人は、電解質異常等のANと関連すると考えられる副作用を経験しました。その他は、創部の痛みが主でした。
②1年の経過で、BMI:13.83→17.34、うつ病尺度( Hamilton Depression Rating Scale scores)19.40→8.79等、大きな改善を示していました。
③SPECTによる脳の機能的画像検査で脳の糖代謝が改善していました。
つまり、“深部脳刺激を行うことで治療抵抗性の神経性食思不振症であっても、体格と気分障害が大きく改善する可能性がある”と言えそうです。
少数例の試験ですが、改善の幅が大きく、その後の生活に対する改善効果が予想される結果でした。
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