うつ病(状態)に対する認知行動療法が薬剤とほぼ同程度に有効であることは少なくとも知識として一般的となりつつあります。
しかし、不眠に対してはあまり認知行動療法が有効であるという認識がないかもしれません。
今回は、不眠に対して認知行動療法を行うとその後のうつ病への移行を防げるかもしれないという内容の研究をご紹介します。
不眠を伴う高齢者におけるうつ病の発症と再燃を予防する
不眠があるがうつではない60歳以上の291人(平均70歳 58%が女性)が研究に参加しました。
参加者を睡眠に対する認知行動療法と、睡眠に関する教育に分け、その後のうつ病への移行を調べました。
睡眠に関する認知行動療法は5つの要素から成り、睡眠に関する非機能的な思考に焦点を合わせた内容・刺激の調整・睡眠衛生・リラクゼーションを含みます。
3年間の経過観察の結果として、以下の内容が示されました。
①うつ病の発症は認知行動療法で12.2%、睡眠に関する教育で25.9%となっていました。
②不眠の寛解率(症状が大きく軽減した確率)は、認知行動療法で50.7%、睡眠教育では37.7%となっていました。
つまり、“不眠に対する認知行動療法は、一般的な睡眠教育よりもうつ病への移行を予防できるかもしれない”と言えそうです。
高齢者の不眠に対しては、即効性の高い解決策として睡眠導入剤の処方が求められることが多いように思われますが、少なくとも同時に(できれば処方の前に)認知行動的な側面に着目したアドバイスがあった方が良いと感じました。
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