自閉症スペクトラム障害の診断のための質問で、頭を壁に打ちつけたり、手を噛んだりするような自傷行為の存在が重視されます。
今回は、研究によって幅のあるASDにおける自傷・自殺のリスクに関して、複数の研究を統合した分析(メタアナリシス)をご紹介します。
自閉症スペクトラム障害の子どもと大人における自傷の危険性
ASDと自傷に関する観察をテーマとする研究31本(子ども16、大人13、両方2)が分析に含まれました。
研究を統合し、自傷や自殺関連事象(希死念慮・自殺企図・自殺)に関して、ASDの有無による起こりやすさの目安(オッズ比)を導きました。
結果として、以下の内容が示されました。
①自傷とASDの関連を調べた17本の研究を統合すると、ASDが存在した場合の自傷のオッズ比は1.21~18.76倍で、統合した結果は3.18倍となっていました。
②自殺関連事象とASDの関連を調べた16本の研究を統合すると、ASDが存在した場合の自殺関連事象のオッズ比は0.86~11.10倍で、統合した結果は3.32倍となっていました。
つまり、“自閉症スペクトラム障害があると全体として自傷・自殺の割合が3倍程度高くなる可能性がある”と言えそうです。
研究によって大きな幅があり、統合結果をみる時にも慎重さを要すると思われますが、全体として自傷・自殺関連事象が増加する傾向があるようです。
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